選挙戦たけなわの敵前逃亡
10月31日に告示され、14日の投開票日を目指して8名の候補が立つという乱戦模様の中、舌戦が繰り広げられている福岡市長選挙。
九州最大の都市の指導者を決めることにもなる、その福岡市長選挙で前代未聞の動きが9日に発生した。
福岡市の教育長を勤めた経歴を持ち、唯一の女性候補でもあった植木とみ子(62)氏が記者会見を開き選挙戦から離脱する意向を表明したのだ。
告示後の報道各社の調査では8候補中、3.4番手につけて選挙戦を展開しているとされていた植木氏の突然の敵前逃亡に140万福岡市民は唖然としている。
公職選挙法の規定では、告示日当日の午後5時を経過して立候補を取り消すことは認められないため、植木氏は、投開票日まで8候補中の一人として公的には残るが、実質的に選挙活動を行わないという形になる。
市長2代の公然公約転換と、男女交遊で候補喪失 福岡市民2度のトホホ
福岡市にはバブル時代の置き土産とも言える博多湾に建設された総事業費1.850億円、敷地面積400ヘクタールという広大なアイランドシティー・和白潟沖人工島の事業運営をどうするかという大きな問題がある。
ここの所2代に亘り同事業の全面見直しを公約に選挙に勝った候補が市長になったものの、いずれも、市長就任後、半年も立たないうちに前言を翻し、事業推進の立場に公然と変転するという茫然自失を福岡市民は味あわされている。
福岡市民は2代の市長に亘って、騙されつづけてきたというわけだ。
今回の選挙で「わたしは嘘をつきません」などという、市民から見れば泣くに泣けないとも、なんとも情けないともいえるスローガンをかかげる候補がいるのも、そんな福岡市民の市政にかんする情けない実体験があることからだ。
そんな中でおこった、植木氏の突然にして、一方では不可解ともいえる、選挙告示後の敵前逃亡。福岡都市圏で経済紙を発行する出版社のデスクは、植木氏の男女交遊の件があるのでは、と指摘する。
「植木氏は男女間の交遊で『華やかなうわさ』が常につきまとう人物だ。市長選挙で当落を争う所までの戦いを展開することにでもなれば、相手陣営から、その辺りの情報を流される恐れがあると思っていたが、今回の選挙離脱会見の不可解さは、そんな動きがあったのではと感じさせる」と氏は語る。
また、「2回前の福岡市長選挙では、現職を破り、勝つだろうと言われていた候補が、やはり告示3日前に立候補を取り下げた。あの時も、男女間の交遊に関する情報のリークを恐れてのことだ、といううわさが立った。その後、その候補予定者であった人物と酒の席をともにする機会があって、うわさの男女の件を質したが否定はしなかった。今回の植木立候補引き下ろしについて何れかが仕掛けとしたら、2回前の候補引き下ろしの成功体験を持つ者が席をおく陣営によるものだろう」とも氏は言う。
どうやら、福岡市民は、2代にわたって市長から騙され、2度の選挙で候補の一人を男女の事で失ったという希有の経験を持つ有権者になったようだ。
告示前にもあった植木氏立候補撤回計画
8候補中のある陣営の幹部は「植木陣営とは、告示前にわが陣営の候補との間で立候補取り下げの調整をしていた」という。
植木氏に立候補を取り下げさせ、共同して選挙に当たろうと協議を申し入れていた。その上で、選挙後、植木氏を副市長に起用して福岡市政に臨む形を同陣営候補が記者会見で市民に伝え、二陣営で一つにまとまり選挙戦に当たろうとしたのだという。
福岡市長選挙の結果への影響として考えられる、今回の植木の動きは、報道各社の調査で、現職の吉田宏氏(54)を激しく追っているとされる、元KBCアナウンサーで自民党が推薦する高島宗一郎氏(36)を有利にすることになると思われる。
敵前逃亡の会見で「私の支援者の中には自民党の票もある。そういう票を無駄にしたくないと思った」と植木氏は述べている。
その他、今回の福岡市長選挙に立候補しているのは以下の各氏。
有馬 精一氏(59・無新)、木下 敏之氏(50・無新)、内海 昭徳氏(32・無新)、飯野 健二氏(49・無新)、荒木 龍昇氏(58・無新)